こんばんは、ヤマネコです。
昨年の冬の終わり、愛用していた腕時計が動かなくなりました。
当時使っていた腕時計は何年も前に贈り物として受け取ったもの。手にしたのはたしか十代の頃で、素人の私が見ても高級品ではないと感じるものでしたが、それでも私にとっては大切な人からもらった、大切な品でした。
その時計が、気づいたときには動きを止めていた。お店(後述のお店とは別店舗)でメンテナンスと電池をしてもらってから数ヶ月目のことだったので、原因は他にあったのだと思います。
すぐには修理に持って行けず、しばらく腕時計なしの暮らしになりました。その日まで毎日つけていたものが突然なくなり少し不便だったけれど、私は在宅時間が長い生活をしているのでなんとかなるかなと。実際、困って仕方がない…というほどではなかったと思います。
それでもつい、腕時計を見ようとしてしまう。
一度ついた習慣を押し殺してまで我慢するものではないと実感した頃に、壊れた腕時計を持って近くの時計店へと足を運びました。
対応してくれたのは、おそらくアルバイトかな?(お店の規模的に息子さん?)と思える若い男性で、時計への知識は深くない様子。実際に修理される方は別にいらっしゃるのだろうと思い、そのまま預けることに。
ただ、高級品ではないこと。
古いものであること。
それでも大切なので、なんとか直したいこと。
見ればわかることでも自分の口から…と思っていた内容をひとしきり伝えたあと、差し出された紙に連絡先を書くよう促されました。
そして書き始めたところで言われたのが、
「買ったほうが安いと思いますよ」
の一言でした。
わかってる。
わかってるし、思ってた。
そう言われる可能性も考えていた。
想定内ではあったのに、妙にグサリときました。
言い回しや、誰がどんな風に言うのか、という問題だったのだと思います。詳しい人がじっくり見てくれた上で、「修理代のほうが高くつく可能性がある」と言うのなら、受け止め方が違ったんじゃないかと。それでも修理を望んだかもしれないし、見積もりだけでもと…少なくとも冷静に先のことを考えることができたはず。
でも「自分は受け取るだけ」という雰囲気でしかない人に、まるで友人へ向けた軽口のような調子でそんなことを言われる筋合いはない、とそのとき芽生えたのは怒りの感情だけでした。
予測していた言葉だったのに、なんでか涙が出そうになって、「じゃあ、もうちょっと考えます」とだけ言葉を絞り出し、カウンターの上に出ていた腕時計を鞄に突っ込んで店を出ました。
カウンター越しに何か言われた気もしますが、ヒステリー状態で聞き取れず。冷静になってから、書き途中だった紙も持って帰るべきだった(部分的でも個人情報を残してきてしまった)と後悔しましたが、あれから一年弱、とくにトラブルは起きていません。
その後のことはブログでもご報告していましたが、まだネチネチ悩んでいた頃にダニエル・ウェリントン社から腕時計モニターのお話をいただき、悩んだ末にお受けして、「不便」は解消されました。
そして一年ほど経った今、ようやく落ち着いた気持ちで、あの店でのことを考えられるようになりました。
初対面の店員さんが、さして高級品でもない古い腕時計を私と同じ熱量で想うことなんてできるはずがない、というのは少し考えればわかること。「買ったほうが安いと思いますよ」の一言には、「ですよね」って笑って返せればよかった。それだけで済むはずのことなのに、私が一人でカッとなってしまったのだろうなと。
そういう感情のコントロールができないことを反省する一方で、身近な人が大切にしているものを私自身が蔑ろにしないように気をつけたい、とも改めて考えました。
古くても、ボロボロでも、高価なものでなくても。所有者にとってどんな価値があるのかわからないものを、勝手に評価しないこと。少ないもので暮らしたいと思えば思うほど、大切なことだと感じます。
そして今、実は動かないままの腕時計をまだ手放せずにいます。
修理店は一駅二駅離れればいくらでも見つかると思いますが、気持ちの上での葛藤があって持ち出すことができません。今となっては直るか直らないかの問題よりも、一般的には正当な評価(価値がないこと)を私が受け入れられないのが理由だと自覚していますが、だからと言って捨てることもできず。
せめていつも目の届くところに置きながら、気持ちの整理がつくまでゆっくり向き合おうと決めています。
本日の猫。
キャリーバッグの一つ、ベッド型のものは出しっぱなしで使っています。
そのほうが猫たちが慣れてくれる(入るのを嫌がらないようになる)かなと思って。実際活用してくれています。
かなりのリラックス具合。
陰から指をチラつかせて遊ぶのも一興。
本日もおつきあい、ありがとうございました。
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