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ネコへの手紙

今日は、2022年の猫の日。

 

突然ですが、いつも思っていることを書かせてください。

 

まず目に留まるのは、なんといってもつややかで柔らかな毛並み。ふれたときのふんわり感が至福。
一方で硬めの毛質もすごくいい。ちくちくと感じるさわり心地に強靭さや野性味を思い起こします。
美貌を維持するために自ら完璧なお手入れをされていることも承知しながら、たまには人間の手も借りていただけると幸いです。

ふわふわの毛で包まれた奥の素肌が、実はもちもち。
毛に覆われているぶん、体を撫でても手のひらが肌に届くことは稀。だから、実際にもこもこをかきわけて、さわらせてもらったときの特別感は欣幸の至りです。

敏感な耳が不思議。私には聴こえていない音も逃さず拾っているのだとしたら神力のよう。
立てたり、寝かせたり、ふるわせたり、観察するととても表情豊か。言葉の代わりの表現方法でしょうか。その奥ゆかしさにも心惹かれる。

もちろんその美声もたまりません。かつては聞き分けられるようになると思っていなかったのですが、今となっては当然のこと。家族なら尚更。こんなに個性豊かな響きを間違えることはないでしょう。
そうはいっても、いつか同じ言語で会話すること、夢を見ずにはいられません。叶うことなら体調が悪いときだけでも教えてもらえたらと思うのだけれど、今はひたすら私自身の観察眼をみがいていきます。

そのお口許、高級車を思わせる象徴がありますね? 大会社が取り入れたくなるほど高貴な容貌、さすがとしかいえません。
奥に秘められた白い牙に感じるのは、やはり強さ。羨望と畏怖。ただ苦情というほどではないのだけれど、実は甘噛み、ちょっと痛いです。

周囲の環境によって雰囲気をがらりと変える瞳は、唯一無二の宝石。直視するのはおこがましいような、見つめられると吸いこまれてしまいそうな。その中のきらきらをずっと見つめていたくなるけれど、一日の大半は閉じられてしまう。その希少さもいい。

控えめながら、顔の中心にある小さな鼻。日常的な健康確認ができ、お互いにくっつけあえば愛情表現や挨拶までこなす優秀さ。
こんなにお世話になっているのに、存在を忘れがちなのをお詫びいたします。

変化と敏感さに驚かされるのが、無数のおひげ。さわられること、あまりお好きではないのを知っているからできるだけそっとしておこうと決めました。
自然と抜け落ちた一本を見つけた日などは、何かいいことありそうです。

ほっぺたは意外と骨ばっていてびっくりします。肉らしい肉がほとんどない。
ちょっと騙されたような気分になるけれど、そんないたずら心の装いも、どういうわけかあなたらしい。

普段の交流時はもとより、ご機嫌ななめのときほど失敬するのが、あご下。
指でくすぐるだけでいいなんてお手軽すぎやしませんか? 指先に与えてもらう柔らかさにこちらも陥落しているけれど。

狭さの代名詞になっているひたい。そこからゆるやかに続く頭部の丸み、しなやかな骨を秘めている躯幹。計算されたかのような曲線美にほれぼれしつつ、指を滑らせる時間が癒し。
その背中を延々となでさせてもらえること、抱っこ中に預けてもらえることを、いつも光栄に思っています。

腰の辺り、とんとんされるのお好きですか?
絶妙な力加減が必須なことも存じております。これからもご指導ほどよろしくお願いいたします。

へそ天で見せびらかされることはあっても、気心知れないうちはなかなかふれることへのお許しが出ないおなか。例えようのないその感触は、できれば他者には秘密にしておきたいもの。
胸元に耳を寄せて聴こえる鼓動に、何度も安心させられています。

胴から伸びる四肢は細く脆弱にも見えるのに、ふとした瞬間、引き出される力はあまりに驚異的。高いところに飛び乗る姿も、低いところに着地する姿も、ほれ直すほどに美しい。
できて当たり前のように思ってしまうことがあるけれど、体には少しずつ変化があるもの。どうか無理はしないでほしい。一緒に歳を重ねましょう。

手足の先端から伸びる爪は、いつでも狩りのできる勇猛さ。こちらも自ずとお手入れされていることを承知の上で、当方の都合により爪切りを用いることが忍びない。
代わりといってはなんですが、お好みの爪とぎを取り揃えるようにいたします。

この世で一番いとおしい天然のぷにぷにのは、おそらくその手のひらにある肉球。あまりの感触に無心でもみ続け、たっぷり元気をもらう日々。これで私の寿命が延びていると言っても、きっと過言ではありません。
さわりすぎてご機嫌を損なうこともあるけれど、あなたは多分ご存じない。くり出されるパンチですらも私にとってはご褒美でした。

しっぽ! しっぽ! しっぽ!
短いのも、長いのも、かぎになっているのも、ぴんと伸びているのも、ため息をついてしまうほど蠱惑的。呼んでも全然来てくれないことがあるけれど、しっぽで応じてくれることもたびたび。
もしかして、冷たいそぶりであしらいたかったのでしょうか? 残念でした。それで満足する人間もいるのです。

気まぐれな性格だと思う。ちょっと冷たいと思うこともある。
でも全身全霊で誰かに甘えたい、そうしていいのか、裏切られないのか、相手をさぐっているのではないか? とも思う。信じていただくための行い、粉骨砕身いたします。

 

あなたたちの畢生の大部分、ともにすごさせてもらえることがどんなに幸せなことか。うるさくなければまた少しずつ伝えていきたい。

生まれてきてくれてありがとう。
これからもどうぞよろしく。

2022年2月22日 22時22分

 

愛を言葉にするのは無粋で迂遠なことと思います。
でも一つ一つ確認してみた結果、間違いなく、彼らは愛しさの塊でした。

 

本日もおつきあい、ありがとうございました。



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